ECサイトの出店先として必ず名前が挙がる、楽天市場とAmazon。
しかし、両者の違いを明確に説明できる人は少ないでしょう。この記事では、2大ECモールの違いを5つの項目で徹底比較します。
ビジネスモデルから市場規模、ユーザー層までを多角的に解説し、結局どっちが自社のビジネスに適しているのか、その判断基準を明らかにします。
まずは、楽天市場とAmazonの最も基本的で重要な違いを5つの項目で比較します。
この章を読めば、両プラットフォームの本質的な特性を理解できるでしょう。
楽天市場は「出店型」、Amazonは「出品型」という根本的なビジネスモデルの違いがあります。
楽天市場は、例えるならオンライン上の「ショッピングモール」や「百貨店」です。事業者は「店舗」を構え、自社の看板を掲げて商品を販売します。
そのため、店舗ごとのデザインや見せ方で独自性を出しやすいのが特徴です。
一方のAmazonは、巨大な「スーパーマーケット」や「商品カタログ」に近いモデルです。
事業者はAmazonという一つの売り場に商品を「出品」します。すべての商品はAmazonの統一されたフォーマットで陳列されるため、顧客は「Amazonから商品を買った」という意識が強くなります。
流通総額では両者に大きな差はなく、どちらも日本のEC市場を牽引する巨大プラットフォームです。
楽天グループの国内EC流通総額（2023年）が約6.0兆円であるのに対し、Amazonの日本事業における流通総額も同等規模と推定されています。
どちらのモールも圧倒的な集客力を持ち、数千万人のアクティブユーザーを抱えています。
EC事業者にとって、この巨大な市場にアクセスできること自体が、両プラットフォームを利用する大きなメリットと言えるでしょう。
楽天市場は女性層、Amazonは男性層の利用者が比較的多いという傾向が見られます。
一般的に、楽天市場は30代〜50代の女性ユーザーが中心とされています。ポイントアップやセールイベント時の「買い回り」を楽しみながら、お得に買い物をしたいと考える層に強く支持されているようです。
対照的にAmazonは、20代〜40代の男性ユーザーが多い傾向にあります。特定の商品をスピーディに探し、レビューを参考にしながら合理的な購買を好む層から高い支持を得ています。
自社がターゲットとする顧客層がどちらに多いかを考えることは、重要な比較ポイントです。
Amazonは送料込みでの分かりやすさ、楽天市場は店舗ごとの多様な価格設定が特徴です。
Amazonでは、プライム会員であれば多くの商品が送料無料で購入できるため、ユーザーは表示価格だけで判断しやすいというメリットがあります。
これは、同じ商品ページに複数の出品者が並ぶ「カート獲得」の仕組みと相まって、価格競争が起こりやすい要因の一つです。
一方、楽天市場では各店舗が個別に送料を設定しています。近年は送料無料基準を統一する「39（サンキュー）ショップ」制度が普及していますが、依然として商品価格と送料を合わせて最終的な価格を判断する必要があります。
ポイント制度では楽天市場が、ギフトカードの汎用性ではAmazonがそれぞれ強みを持っています。
楽天市場の最大の武器は「楽天ポイント」です。
楽天グループのサービスを使えば使うほどポイント還元率が上がるSPU（スーパーポイントアッププログラム）は非常に強力で、多くのユーザーがポイントを貯める・使うことを目的に楽天市場を利用しています。
Amazonポイントは、キャンペーンや一部対象商品で付与される形式が中心です。
一方、Amazonギフトカードは、自身のAmazonアカウント残高にチャージしてほぼ全ての商品に利用できる手軽さが魅力です。プレゼントとしての需要も非常に高く、幅広いシーンで活用されています。
これまでの比較内容を一覧表にまとめました。各項目の違いを俯瞰的に把握することで、両プラットフォームの全体像がより明確になるでしょう。
| 比較項目 | 楽天市場 | Amazon |
| ビジネスモデル | 出店型（ショッピングモール型） | 出品型（スーパーマーケット型） |
| 市場規模 | 約6.0兆円 | 約6.0兆円 |
| 主なユーザー層 | 30代〜50代の女性 | 20代〜40代の男性 |
| 価格の仕組み | 店舗ごとに送料設定（39ショップ制度あり） | プライム会員は送料無料が多い |
| ポイント制度 | 楽天ポイント（SPUで高還元率） | Amazonポイント（キャンペーン中心） |
| ギフトカード | 楽天ポイントギフトカードなど | Amazonギフトカード（汎用性が高い） |
プラットフォームを選ぶ上で、運営コストや販売開始までの時間、そして販売戦略の自由度は重要な判断基準です。
ここでは出品者の視点に立ち、この3つの観点から楽天市場とAmazonの運営における違いを具体的に解説します。
初期費用を抑えて手軽に始めやすいAmazonに対し、楽天市場は月々の固定費が高くなる傾向にあります。
これは、Amazonが「まず商品を売ってみる」というスモールスタートに適した料金体系を持つのに対し、楽天市場は「本格的に店舗を運営する」という事業者向けの料金体系を基本としているためです。
両者の代表的な料金プランを比較すると、その思想の違いがよく分かりますね。
| 比較項目 | Amazon | 楽天市場 |
| プラン例 | 大口出品 | スタンダードプラン |
| 初期費用 | 0円 | 60,000円 |
| 月額費用 | 4,900円 | 50,000円 |
| 販売手数料 | 商品カテゴリ別に8〜15% | 月間売上高に応じて2.0〜4.5% |
※上記は税別の代表的なプランです。契約時期やキャンペーン等により変動する場合があります。
Amazonの販売手数料は商品カテゴリーごとに一律ですが、楽天市場では月間の売上高に応じて料率が変動する仕組みです。
また、楽天市場では上記に加えて、楽天ポイントの原資負担やアフィリエイト利用料など、独自の費用項目が存在します。
表面的な月額料金だけでなく、トータルコストで比較検討することが重要と言えるでしょう。
すぐに販売を始めたい場合はAmazonが、時間をかけて準備を進めるなら楽天市場が適しています。
このスピード感の最も大きな違いは、「出店審査」のプロセスにあります。
Amazonは出品用アカウントを作成し、必要書類を提出すれば、通常3営業日ほどで審査が完了し、すぐに出品準備に入れます。
一方、楽天市場の審査はより厳格です。出店申し込み後の「書類審査」に加え、店舗ページを構築した後の「オープン前審査」という2段階のプロセスがあり、販売開始までに数週間から1ヶ月以上かかることも少なくありません。
この審査の厳しさは、楽天市場というショッピングモール全体の信頼性を担保するためのものでもあります。
スピーディーさを取るか、時間をかけてでも信用の高い場所でスタートするかは、事業戦略によるといえそうです。
楽天市場は店舗の個性を最大限に活かせますが、Amazonは商品そのものの力で勝負するプラットフォームです。
この「自由度」の違いは、特にページデザインや顧客との関係構築において顕著に現れます。
Amazonの商品ページは、全出品者で統一されたフォーマットを使用します。これにより、出品者はデザインに悩むことなく、商品情報と画像の登録に集中できる手軽さがあります。
対して楽天市場では、HTMLやCSSを用いて店舗ページや商品ページを自由にデザインできます。これにより、ブランドの世界観を演出し、オリジナリティの高い店舗作りが可能です。
Amazonでは顧客との直接的なコミュニケーションは規約で制限されており、メルマガ配信などの販促活動はできません。
一方で楽天市場は、購入者の同意を得て顧客リストを管理し、メルマガを配信するなど、積極的なリピーター育成策を打つことが可能です。店舗のファンを作りやすい環境といえるでしょう。
Amazonでは、同じ商品であれば一つの商品ページに複数の出品者が「相乗り」する形で販売します。そのため、ユーザーの目に付きやすく、価格競争が起こりやすい構造です。
楽天市場では店舗ごとに商品ページが独立しているため、価格だけでなく、ページの作り込みや独自のサービスといった付加価値で他店と差別化を図ることが可能です。
結局のところ、どちらのプラットフォームが優れているかは、事業者のビジネス戦略やリソースによって異なります。
これまで解説した運営における3つの違いを、出品者視点での比較ポイントとして以下の表にまとめました。
| 比較項目 | Amazonの特徴 | 楽天市場の特徴 |
| 費用 | 初期費用が安く、スモールスタート向き | 月額固定費が高く、本格的な店舗運営向き |
| スピード | 審査が早く、短期間で販売開始が可能 | 審査が厳格で、販売開始まで時間がかかる |
| 戦略の自由度 | 商品力と価格で勝負する「出品型」 | ブランディングや顧客との関係構築で勝負する「出店型」 |
このように、手軽さやスピード感を重視して「商品を」売りたいのか、あるいは時間をかけてでも独自の「店舗を」育てていきたいのか、という目的によって最適な選択は変わります。
自社の状況と照らし合わせて、どちらがより強みを発揮できるかを見極めることが成功への第一歩です。
ECサイトを利用する上で、購入者と出店者の双方にとって「安心感」は重要な要素です。
ここではサポート体制と出店審査の観点から、両プラットフォームの安全性の違いを比較します。
Amazonは窓口が一元化されている一方、楽天市場は店舗ごとの個別対応が基本です。
商品に関するトラブルや問い合わせが発生した際の対応フローには、明確な違いがあります。
Amazonで購入した商品の場合、その多くはAmazonのカスタマーサービスが問い合わせ窓口となり、返品や返金手続きを一括で管理します。これにより、ユーザーはどの出品者から購入しても均質で安定したサポートを期待できるでしょう。
一方で楽天市場は、各出店店舗が直接ユーザー対応を行います。そのため、サポートの質や対応スピードは店舗によって異なります。これは、出店者にとっては丁寧な顧客対応で店のファンを作るチャンスにもなりますが、同時に質の高いサポート体制を自社で構築する必要があることを意味します。
| Amazon | 楽天市場 | |
| 問い合わせ窓口 | Amazonカスタマーサービス | 各出店店舗 |
| 対応の均質性 | 高い | 店舗により異なる |
| 出店者の役割 | 一次対応をAmazonに委託可能 | 自社でサポート体制を構築 |
楽天市場は厳格な審査を設けることで、モール全体の信用を担保しています。
プラットフォームとしての信頼性は、出店者の質に大きく左右されます。 楽天市場へ出店するには、書類審査と開店前審査という2段階の厳格なプロセスを経る必要があり、数週間から1ヶ月以上の期間を要することも少なくありません。
このハードルの高さが、結果的にモール全体の安全性を高め、ユーザーからの信頼につながっていると言えそうです。
対してAmazonは、比較的簡易な手続きでスピーディーに出品を開始できる点が特徴です。この手軽さが多くの事業者を惹きつける一方で、過去には悪質な出品者が問題となるケースもありました。
もちろん、現在では本人確認の強化など、Amazonも審査基準を厳しくする傾向にあります。
出店者から見れば、審査の厳しさは信用の証であり、どちらのプラットフォームの考え方が自社の戦略に合うかを考える一つの材料となるでしょう。
これまで比較してきた楽天市場とAmazonの違いを踏まえ、事業者タイプ別におすすめのプラットフォームを解説します。
自社の目的や戦略に合った賢い使い分け方を見つけましょう。
とにかく早く、手間をかけずに商品を販売したい事業者にはAmazonが向いています。
Amazonの最大の魅力は、出品開始までのスピード感と運営の手軽さです。出店審査は比較的スムーズに進むことが多く、商品ページの作成も定められたフォーマットに沿って情報を入力するだけなので、Webデザインの専門知識は必要ありません。
また、物流サービス「FBA」を活用すれば、商品の保管から梱包、発送、さらには顧客対応までAmazonに一任できます。
これにより、事業者は在庫管理の負担から解放され、商品の仕入れやマーケティングといったコア業務に集中できるでしょう。
これらの特徴は、Amazonの「出品型」というビジネスモデルが支えています。
店舗の個性よりも商品の魅力をシンプルに伝え、効率的に販売するための仕組みが整っているといえそうです。
自社のブランド価値を高め、長期的なファンを獲得したい事業者には楽天市場が最適です。
楽天市場は、店舗ページのデザイン自由度が非常に高いのが特徴です。HTMLやCSSを駆使して独自の世界観を表現できるため、自社ブランドのイメージを顧客に強く印象付けることができます。この点は、Amazonとの明確な違いと言えるでしょう。
さらに、顧客情報をある程度活用できるため、メールマガジンを配信して新商品やセール情報を届けたり、クーポンを発行して再購入を促したりと、リピーター育成のための施策を主体的に行えます。
顧客との直接的な接点を作りやすい環境は、ファン作りの上で大きな強みとなります。
「出店型」である楽天市場は、単に商品を売る場所ではなく、自社のお店を構えて顧客を育てていくプラットフォームです。
手間はかかりますが、その分、強固なブランドを築ける可能性を秘めていますね。
楽天市場とAmazonのどちらか一方に絞らず、両方の長所を活かす併用戦略も非常に有効な選択肢です。
二大モールに同時に出店することで、より多くのユーザーにリーチでき、販売機会を最大化できます。また、一方のプラットフォームで規約変更やトラブルがあった際のリスクを分散させる効果も期待できるでしょう。
具体的な使い分けとしては、以下のような戦略が考えられます。
もちろん、両モールを運営するには相応の管理コストがかかります。
しかし、それぞれの違いを深く比較・理解した上で、自社のリソースに合わせてチャネルを使い分けることができれば、ビジネスの成長を大きく加速させられるかもしれません。
ここでは、楽天市場とAmazonの違いに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
A: 商品や条件により一概には言えません。
Amazonプライム会員であれば送料込みで安くなる商品が多い傾向にあります。一方で、楽天市場はポイント還元率が非常に高く、セールや「買いまわり」を駆使すれば実質的な支払額を大きく抑えることが可能です。送料の仕組みも異なるため、商品の総額と獲得ポイントを比較して判断するのが賢明でしょう。
A: Amazonの小口出品プランが始めやすいです。
Amazonの小口出品は月額費用が無料で、出品審査も比較的早く完了するため、手軽に始めたい個人や副業に最適です。楽天市場は出店審査が厳格で初期費用も必要なため、ある程度事業計画を固めてから本格的に挑戦するのに向いていると言えます。
A: 楽天市場の方がファンを増やしやすいです。
楽天市場は店舗ページのデザイン自由度が高く、メルマガなどで顧客と直接コミュニケーションを取る機会も多いため、お店の個性を出してファンを育てやすい環境です。Amazonは商品が主役のプラットフォームであり、店舗の独自性を前面に出すのは難しい側面があります。
本記事では、楽天市場とAmazonの基本的な違いから、出品者向けの運営面での比較までを解説しました。
最後にこの記事の要点を振り返り、あなたのビジネスにとって最適な選択ができるよう後押しします。
楽天市場とAmazon、二大ECモールの選択は、単に「どちらが優れているか」という視点だけでは正しい答えにたどり着けません。
重要なのは、それぞれのプラットフォームが持つ根本的な思想と特性を理解し、自社のビジネス戦略と照らし合わせることです。
改めて、両者の特徴を整理しておきましょう。
楽天市場が向いているケース
Amazonが向いているケース
どちらのプラットフォームを選ぶかは、あなたがECビジネスで何を最も重視するかによって決まります。
まずは自社の「目的」と「戦略」を明確にすることが、最適な選択への最短ルートと言えるでしょう。
楽天市場とAmazonは、それぞれ異なる強みを持つ巨大なプラットフォームです。
優劣で判断するのではなく、自社の商材、資金力、そして将来のビジョンにどちらが合致するかを見極めることが成功の鍵となります。
この記事が、あなたのECビジネスにおける最適な一歩を踏み出すための羅針盤となれば幸いです。
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